黒曜備忘録

備忘録

フラッシュバックを止めよ

人はいつも、何かを思い出そうと、尋常ではない努力をしている。
そして、それは大抵無意識に、無自覚に行われる努力である。

 

種々の感情は、物事を見て、それに関する感覚を想起することで始まる。
今まで生きてきた上での経験、知識、感覚、受けた/起こした感情を、
人は常に、何かを見た時、すかさず、見たものに関連するものについて、
それらを想起し、見たものに当てはめ、そして感情の追体験を行うのである。

 

さらにいうと、何もそれは、過去に起きた出来事である必要もない。
自分が未来を想像し、予想する。そういった過程の中で生じた感覚、感情でさえも、
隙さえあれば思い出し、想起し、そして再び同じように味わうことになるのである。

 

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PTSDという病気がある。過酷なストレスを受けた人間が、些細なきっかけにより、
その受けた出来事や感覚、感情をフラッシュバックさせ、苦しむという症状だ。

 

しかしこれは、特別なことではない。過酷なストレスを受けていない人間でも、
普段からまったく同じことをして、同じ機序によって苦しみを受けている。

 

それどころか、実際に体験していない、妄想によって生み出した感覚ですら、
人はそれをフラッシュバックさせ、強い苦しみや感情を巻き起こしているのである。

 

フラッシュバックを受けた人間は、心ここにあらずの有り様となる。
「今ここ」に生きることはかなわず、目の前の現実をそのままに認識できなくなる。

 

思い出そうとすることをやめなくてはいけない。
フラッシュバックの発生に常に気を配り、それを抑えなくてはいけない。